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小説:夢鏡 1 

白天使と黒天使が賭けをした。
黒天使は言った
 天国にいける人間でも、なんでも自分の夢がかなう物を与えたら、人は自分の欲望のために使う。
 そして多くの人は天国にいけなくなるだろう・・・と

■夢鏡 1

豪華客船で真っ白なタキシードを着て船上パーティ
そこへ綺麗に着飾った恋人がやってくる
二人で仲良くシャンパンで乾杯
恋人と一緒に楽しい一時
「夢だったの。こんな豪華客船で旅行するのが、やっと夢がかなったわ♪」
無邪気に喜ぶ彼女をみて、やさしく微笑む彼
夢のような一時が流れていく

電話が鳴って目が覚めた。
飲みすぎたのか、頭がふらふらする
電話の内容は 二人の夢をかなえるため、夜遅くまで一生懸命に働いていた恋人が
事故にあって亡くなった・・・と告げる
「えっ! 今は豪華客船で旅行中・・・」と周りを見ると
豪華客船ではなく 二人で暮らしていた小さな部屋
朝早く帰ってきていつも隣で寝ているはずの彼もいない

彼が亡くなったなんて、信じられない!
悲しくて、悲しくて、泣き続ける彼女。

「亡くなる前に私の夢をかなえてくれたのね・・・」

彼に会いたい! 会って一言でいいからお礼がいいたい。
「今までありがとう、愛しています」

そんなとき
以前妖精にもらった
「夢鏡」のことを思い出す。
一度だけ強く願えば、夢がかなう手鏡。
過去を変えることはできないけど、過去に戻ることはできる。
過去を変えると、それなりの代償をはらわなければならない。

でも、彼にあってお話がしたい! お礼を言いたい!
ただそれだけだから・・・

・・・そして一言、今日は仕事に行かないでと言えば・・・

彼女は「夢鏡」を使う

豪華客船で綺麗に着飾って船上パーティへ向かう彼女がいる。
「えっ? どうして? なぜ?」
不思議に思う彼女。
でも向かう先に、真っ白なタキシードを着た彼がいた。

会いたかった、会いたかった彼。
感激の再開・・・あとからあとから涙が溢れ出す。
二人で仲良くシャンパンで乾杯
恋人と一緒に過ごす楽しい一時

夢のような一時が流れていく

「夢だったの。こんな豪華客船で旅行するのが、やっと夢がかなったわ♪」
前みた夢と同じように無邪気に喜ぶ彼女。
それを見てやさしく微笑む彼氏

「今まで本当にありがとう。愛しているよ。」
・・・っえ! それは私が言いたかったことば!

突然、ものすごい轟音とともに船が大きく揺れて
船が真っ二つに割れていく。
客船が座礁したのだ。
船から投げ出され、海に流される彼女。
彼女に手を差し出し、彼女の名前を叫び続ける恋人。
海に飲み込まれながら薄れいく意識の中で彼女は思い出した。

自分はあのとき、海に飲まれ亡くなったことを・・・

彼女を失い、悲嘆にくれる恋人。
彼は彼女を取り戻すために自分の命を代償に「夢鏡」を使ったのだった。

彼女が「夢鏡」を使ってくれたおかげで
彼は彼女に伝えたかった言葉を伝えることができた。

電話が鳴り、
目が覚めるとそこは二人の部屋だった。
くらくらする頭で、ふと目をやると
二つの「夢鑑」が、割れていた。

                     夢鏡1 End
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