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小説:夢鏡 2 

■夢鏡 2

-序章1-

少女が一生懸命、料理を作っている。
今日は彼女の誕生日。
飾りつけも終わり、帰りの遅い父親にあわせて
彼が一番好きな料理を作っているところだ。

机の上には父親からもらったオルゴール。
それをとりかこむように
手のこんだ料理が並べられている。

自分の誕生日のご馳走を
自分で作ることに
ちょっと不満を感じるけど
父親の喜ぶ顔がみたくて
腕によりをかけて料理を作っている。

大好きなご馳走を目の当たりにした
父親の喜ぶ顔を想像するだけで胸弾み
ついニヤニヤしてしまう彼女だった。
・・・これを食べたら、絶対お父さん
私のことを好きになってくれるわ♪

そこへいきなり男たちが押し入ってきた。

-序章2-

「気分はどうだい?」
ベッドで目覚めた少女に白衣を着た見知らぬ男が声をかけた。
頭がガンガンするけど、それ以外は正常だ。
医者だというその男に
「今日が、何年何月何日かこたえられるかね?」
と聞かれた。

今日は・・・そう、確か今日は、私の誕生日

「・・・やはり君は、あの時から
 回路がループしてしまっているんだね。」
もう10年以上も同じことを繰り返している。
毎日毎日帰らぬ父親を待っている。

・・・うそ、そんなはずないわ・・・

目の前で父親を失ったショックから立ち直れず
少女は一部メモリー回路を閉じてしまっていた。

-一章-

心から愛し、目に入れても痛くないほど
かわいがっていた娘を病気で亡くし男は途方にくれた。
そして人形士だった彼は
気を紛らわすために
娘そっくりの人形をつくった。
最初のころは
まるで娘がよみがえったかのように
彼女を可愛がったが
日がたつにつれ
彼女が亡くなった娘ではないことを思い知った。

姿、形や声は同じでも
性格が違う、笑顔が違う、
ちょっとしたしぐさが違う。
そして彼は彼女を冷たく
突き放すようになった。

最近は彼女の顔を
まともに見ることもできず
帰りが遅くなる毎日であったが
今日は娘の誕生日。
プレゼントでも買って帰ろうか・・・

家の前までくると
手の込んだ料理の香りがしてきた。
彼が一番好きな料理。
一度教えただけなのに
今ではどの店で食べるよりおいしい。

娘は料理なんか作れなかったのに・・・

扉を開けるとそこには
見知らぬ男が二人立っていた。
そしていきなり彼に発砲した。

弾は彼をかばった彼女の背中にあたり胸を突き抜けた。
二発めは彼の胸にあたった。
プレゼントに買ったオルゴールの音色が
部屋に悲しくこだまする。

薄れゆく意識の中で
床を血にそめる彼女が見える。
・・・娘がまた、死んでゆく・・・
・・・それも自分をかばって
また何もしてやれないまま。
この娘にはなにもしてやれなかった
前の娘と違うというだけで
とまどい冷たくしてしまった
私が笑うと100倍の笑顔で喜んでくれた
私の好きな料理を一生懸命覚えて作ってくれた
冷たくしてもいつも笑顔で迎えてくれた
そんな彼女が愛おしくて
昔の娘を忘れてしまいそうで・・・
とまどい冷たくしてしまった

「鏡よ・・・鏡
 私のたった一つの願いを、かなえておくれ・・・」
彼は夢鏡に祈った。

-二章-

朝日の中、彼女は目覚める
今日は・・・そう、確か今日は、私の誕生日
お父さんはもう、職場へ行ってしまったの?
お父さんが帰ってくるまでに
お父さんの一番好きな料理を作っておかなくっちゃ
・・・これを食べたら、絶対お父さん
私のことを好きになってくれるわ♪

まず昨日の晩餐の後片付けをして。。。

よみがえったのは実の娘ではなく
娘を模してつくった人形の彼女。
伝えられなかった、彼の気持ちを
一言伝えてあげたかった

愛していると・・・

前の娘としてでなく
二人目の娘として、愛していると・・・

-三章-

家の前までくると
手の込んだ料理の香りがしてきた。
彼が一番好きな料理。
一度教えただけなのに
今ではどの店で食べるよりおいしい。

娘は料理なんか作れなかったのに・・・

扉を開けるとそこには

彼女が立っていた。

「お父さん、おかえりなさい♪」

満面の笑みで父親に飛びつく少女。
父親もなぜか涙があとからあとから溢れ出し止らない。

愛しているよ・・・

前の娘としてでなく
二人目の娘として、愛している・・・

男は少女を抱きしめながら
そう、伝えた。

傍らには二つ
夢鏡が割れていた。

-終章-

朝刊が二人組の強盗が捕まったと報じた。
道の真ん中で倒れていたそうだ・・・

過去を変えると、それなりの代償をはらわなければならない

人形からは代償をとれなかったのか
それとも
きまぐれなのか

夢鏡

                    夢鏡 2 End
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